「◯LDK」「◯帖」だけが間取りの基準ではない

まず、totonoiが考える「間取り」がどういったものなのか、についてお話しておきたいと思います。

「間取り」と聞くと、「3LDK」で「LDK(リビングダイニングキッチン)は20帖」など、「居室の種類と部屋数」をイメージする方が多いのではないでしょうか。家づくりの場面でも、「どんな家に住みたいですか?」と尋ねられたとき、「部屋は何部屋」「何帖くらいの広さ」といった、数字を基準に考えた間取りを理想として挙げる方も多いでしょう。

「大人のリノベ」の家づくりでまずお伺いするのは、「どんな暮らしがしたいのか?/家で何をしたいのか?」ということ。ライフスタイルを伺って、そこから住まいのイメージづくりを展開していきます。「LDKの広さ」や「個室の数」を考えるのは、理想の暮らしを思い描いたあと。暮らしをつくっていく上で大切なのは、数字ではなくライフスタイルなのだということを頭の隅に置いていただきながら、このコラムを読み進めていただけると幸いです。

「ライフスタイルをイメージする」ことについてピンと来ない方は、まずは大人のリベガイド#04「大人のライフスタイル」をご覧いただくとイメージがしやすいと思います。

では、自分らしいライフスタイルを追求した間取りの事例をご紹介していきます。

親子三人+2頭で住む仕切りのないワンルーム空間

 

外苑前にある、オフィス仕様のマンションの一室を購入してリノベーションした、当時50代のご夫婦と20代の長女、愛犬2頭のO様ファミリー。「子育てが終わったら広さより利便性が重要」と、東京郊外の広い一軒家から都心に住み替えました。

元々ワンルームに近かった間取り。壁を立てて部屋を区切る案も検討しましたが、「さほど広くない空間で通路に面積を割いたり、壁で日差しを遮ってしまうことになるのはもったいないし、家族が家にいる時間もそう重ならない」とワンルームの間取りを生かしたレイアウトになりました。「一人になりたいときは、近所にある素敵なカフェやお店で一人の時間を楽しめばいい」と割り切ったのだそう。街も生活の一部に取り込む、都心暮らしならではの大人の住まいです。

暮らす場所選びや物件選びによって、間取りも大きく変わってきます。住み替えや間取りを考える時には、まず◯LDKに捉われない暮らしのイメージづくりから始めることが重要ですね。

O様邸@外苑前

寝室のまわりをぐるりと回遊できる、夫婦の距離感が心地いい間取り

世田谷区内にある約118㎡の5LDK+Sの中古マンションを購入し、ライブラリースペースやインナーテラスを備えたお住まいにリノベーションされた50代のご夫婦の事例です。施主のS様は「60㎡以上でワークスペースのある1LDKが希望」というご希望をお持ちでしたが、建築家がヒアリングした結果、見えてきたのは「開放感があり、夫婦で適度な距離感を保ちながらも過ごせる」という理想の暮らしのイメージでした。

間取り図を見ると、ベッドルームが窓に面していないことがお分かりいただけると思います。「お互いの気配が感じられるように閉じない」というご希望を叶えるために、ベッドルームをずらしてインナーテラスをつくり、インナーテラス(兼ギャラリースペース)、ライブラリースペース、ワークスペースを回廊式に配置しました。個室ではないので閉塞感がなく、気配は感じるけれど視線は届かない、孤立せずにプライベートタイムを楽しめる空間になりました。

当初は都心暮らしを希望していたS様ですが、心地よく過ごせる家を手に入れたことで、読書やDVDを見てゆったり過ごす暮らしを楽しんでいるそうです。

S様邸@世田谷

家中が涼しく暖かい、光も風も抜ける間取り。収納も要約して整理上手な暮らし

20年間暮らしてきた約65㎡のマンションをリノベーションしたH様の事例です。「明るい部屋で、冬暖かく夏涼しい快適な暮らし」を望んでいたH様。以前は3LDKの間取りで、部屋が細かく仕切られていて、寝室が暗くて寒い北側、収納に使っていた部屋は明るい位置にあるなど、Hさんが望む使い方に合わない間取りでした。

リノベーションでは、暗かった寝室をウォークインクローゼットに変更。収納にしていた部屋はリビングと繋げ、ガラス張りの寝室とインナーテラスにしました。H様が望んでいた、眺望と採光の良さを生かした、開放感ある住まいになりました。また、窓にインナーサッシを付ける、壁に断熱材を貼り直す、床暖房の設置など、温熱環境を整えることにも注力され、ワンルーム的な暮らしをより一層快適にしました。

H様のようにお住まいだったご自宅をリノベーションする場合は、これまでの生活で感じていた不満を改善される方が多い傾向にあります。住み替えなくても、間取りを変えることで快適な暮らしを手に入れる方法もあるという好例です。

H様邸@荻窪

リビングはいらない!? ダイニングキッチンでくつろぐ斜めの壁の家

目黒区内にある80㎡の中古マンションを購入し、リノベーションしたK様ご夫妻。以前は近隣にある広めのタウンハウスにお住まいでした。奥様の希望は「広々としたダイニングキッチン」。普段から二人で過ごすときはダイニングで語らうことが多かったそうで、「リビングのソファでくつろぐことがなかった」ご夫妻は「リビング」という概念を捨て、ダイニングキッチンを暮らしの中心に据えることにしました。

奥様はご自宅で料理教室をなさっていることもあり、ダイニングには最大8人が着席できるようなエクステンションテーブルが置けることが必須。テーブルを広げても人が通れるようにするためには、既存の間取りではどうにもならない…と生み出されたのが「斜めの壁」です。四角い住戸の対角線上に間仕切りを配置することで、各部屋に奥行きを生むことができました。寝室側から玄関やトイレへ行き来できるようになっており、ご主人の在宅時に教室を開催する場合にも配慮しています。

自分たちの暮らしに必要なものだけを組み合わせて間取りをつくる。これまでの暮らしを見つめ直すことで、固定概念から解放された自分たちらしい住まいを実現した例です。

K様邸@都立大学

まとめ

ご紹介した4つの事例を見ておわかりいただけると思いますが、同じ「大人世代」の暮らしでも、それぞれでまったく異なる間取りにリノベーションされています。。冒頭でお伝えしたように、「大人のリノベ」では、お客様が思い描くライフスタイルを実現することを軸にして設計するので、間取りも人それぞれになるのです。あなたが住まいで実現したいことはなんでしょうか。「アートを飾りたい」、「一人でじっくり読書ができる場所が欲しい」など、きっと思い浮かぶことがあるはずです。これからの人生の時間を豊かに過ごすために、まずは「自分が望むライフスタイルとは」をじっくり考えるところから始めてみてください。