固定概念を取り払ったときに見えてきた住まい像

▶︎朝の爽やかな風景を見ながら、お二人でダイニングに並んで朝食を摂るのが楽しみのひとつ

会社員のご主人と、ご自宅でお料理教室と着付け教室を開いている奥様。Kさんご夫妻が住宅購入を考え始めたきっかけは、ご主人の勤務先の家賃補助があと数年でなくなることでした。

「3年以内の引っ越しが必須でした。それまで住んでいた賃貸がテラスハウスでしたので、小さなお庭があって、バラやハーブを育てて…。そういう生活をし続けたいと思っていました。ですから、都心寄りの戸建てを探していましたが、価格と立地のバランスが悪くて、他の方法を考え始めて。そんな頃に、ポスティング広告でリノベーションを知ったんです」(奥様)

何件かリノベーション済みマンションを実際に内見するうち、リノベーションで自分たち仕様に空間づくりをすることを考え始めたKさんご夫妻。いくつかのリノベーション会社に問い合わせをしたそうです。

「問い合わせした会社の中で、対応が早かったのが御社でした。結果的に、これはご縁だったのではないかと」(ご主人)

▶︎エントランスからみたリビング。引戸はすっきり収納して開け放っていることがほとんどだそう

リノベーションした現在のお住まいは、私たちからKさんご夫妻に初めてご紹介した物件。住み替え前と同じ都立大学エリアにある旧耐震のマンションで、私たちとしては、Kさんご夫妻の暮らしへのご要望を聞いた上で、ぜひ見ていただきたいと思ったおすすめの物件でしたが、実はKさんご夫妻のご希望は「港区エリア」で「新耐震」であることでした。

「単純に近所だったので、見に行きやすかったんです。内見に出掛ける時点では、まさかこの家に決めるとは思っていませんでした(笑)。ただ、第一印象で眺望が素晴らしかった。それから、このマンションに住んでいる方から東日本大震災当時の事を伺って、耐震に対してある程度「お墨付き」をいただいた気持ちになれたこと。それと、住人の方々や管理体制がしっかりした印象だったこと、南北に開放感のある間取りができそうだったことが決め手になりました。不安だったのは、キッチンが狭いことくらいです」(奥様)

そうして、「条件外」だった物件にも関わらず、内見当日にお申し込み。そのまま契約へと至ります。

「申し込みから契約までのあいだに、中古マンション購入についての本を3冊ほど購入しました。とはいえ、本からの知識より、御社から直接伺ったお話のほうが判断材料になっています」(ご主人)

ライフスタイルを知ることからプランニングは始まる

▶︎80㎡という空間を伸びやかに使ったリビングダイニングキッチン

K邸のリノベーションには、建築家をパートナーとしてご提案しました。プランニングに取り掛かる前には、担当の建築家とともに当時のお住まいへお伺いし、お手持ちの家具の確認や、奥様が教室を開催する時にどのように行動するのかを確認。お二人は、「将来もこのライフスタイルから変わらないだろう」というお考えのもと、住まいについてさまざまな要望をお出しくださいました。

「プランを進める段階では色々なショールームへ行きました。新たな希望を入れるためではなく、“あ、私たちが思っていたイメージは間違っていなかった”と確かめる感じですね」(ご主人)

最終的に出来上がったお住まいのプランは、初回提案時からほとんど変更なし。建築家もこの1プランしか用意しないほど、自信を持ったプランでした。明確なライフスタイルを持ったKさんご夫妻だからこそ実現できた住まいです。

▶︎お料理教室の際の動きにも考慮してオリジナルでつくったキッチンには、奥様のこだわりが詰まっています

「最初に見た時はびっくりしましたが、ひと目で気に入りました。不安だったキッチンは広くなっていましたし、夢だったパントリーも作られていて。嬉しかったですね。それと、キッチンがオリジナルのキッチンになるとは思っていませんでした。キッチンは工業製品だと思っていましたから」(奥様)

予算や要望の具合によって既製品を使う場合もありますが、弊社では、キッチンはまずオリジナルで考えます。既製品の正確さや美しさは捨て難いですが、オリジナルキッチンには、細かな寸法から仕様まで、そこに住む方に合わせて作る良さがあります。

「キッチンは私にとって仕事場でもありますから、力を入れました。お料理教室のハードな使い方に耐えられる耐久性のある天板や、その形、寸法、ひとつひとつ一緒に決めて行きました。住まいをつくることは想像以上に大変でしたが、その分満足度も愛着もひとしおです」(奥様)

▶︎天窓のように見えるライティングのお陰で天井に奥行きができ、空間をより広く見せてくれます

お気に入りの場所は?と聞くと、奥様が「キッチン」、ご主人は「リビングと朝ご飯の時のこのダイニングテーブル」。この家は高層階ですが、眺めの良い窓から光や風が入り、さらに床に敷いた無垢のパインフローリングで木の香りも漂います。自然の力に配慮することで、オリジナルな住まいづくりの魅力がより際立っています。

「この家をつくって良かったなと思っています。以前は感じることができなかった、相手の気配が感じられて。ドアはほとんど開けたままで生活しています。居心地が良くて、何とも言えない気持ちの良い空気が感じられるので、食事も楽しくて。もともと好きだったワインを飲む量が増えました(笑)」(奥様)

訪れる誰もが心地よいと感じる家に

▶︎寝室の横にある書斎へは、リビングからの光がこぼれてきます。なんとなく向こうの気配が感じられる隠れ家のような場所

料理教室の生徒さんや、お客様にも好評だという新居。特に、パイン材のフローリングの気持ち良さに反応する方が多く、みなさん素肌で質感を確かめるのだとか。

「洗面室も広くしておいて良かったと思っています。予算の関係上、洗面台の下に棚を作れませんでしたが、これが案外すっきりしていて、広く感じられるんです。そんな風に、仕方なくそうしたことで、結果的に成功している部分もあります」(奥様)

▶︎広々とした洗面室は、ここがマンションの一室であることを忘れさせてくれます

プランニングの際、奥様が要望していたことのひとつが「非日常感のある洗面所」。生活感を感じさせるものがない洗面所は、ホテルやお店のサニタリーのようです。

ライフスタイルに合わせた住まいをつくるということ

▶︎ベッドルームはかなりシンプル。厳選した家具だけ

自分たちにフィットする住まいをリノベーションでつくり上げたK様ご夫妻。ライフスタイルは変わらないという想定でしたが、出来上がった新居に引っ越す際には、本だけで6箱ほどを処分し、家具もほとんどリサイクルに出したそうです。

「この家に住むようになって、本当に気に入った必要なものだけに囲まれて暮らすことが、どれだけ豊かなことなのかがわかりました。後は、自分たちも参加した家づくりですので、住みながら変えていく楽しみがありますね。ここに絵を飾ろうと考えたり、ソファを置こうか考えたり…。今は壁の白い余白を楽しんでいます」(奥様)