30年後に資金が尽きる!?

ー娘さんの一言から約10年。どのような経緯で今日に至るのですか?

奥様 最初に「北海道から出たいと思うんだけど」と主人に伝えた時、何も返事がありませんでした。疑問に思ってゆっくり話を聞くと、金銭面の懸念があるとのことでした。

ご主人 年金だけでの暮らしをシミュレーションすると、30年後には資金が尽きてしまうという結果になったのです。でも、「娘の近くに引っ越そう!」と前向きに考え始めている妻に、そう伝えるのは口が重くて、すぐには快諾できませんでした。その後、話し合ううちに、年金に頼らなくて済むよう資金を貯めようと二人で決めました。

奥様 どのぐらいあれば家を買えるのか? 東京だと戸建ではなくマンションになるのか? 農家を辞めたら収入がなくなることはどうするのか? いろいろなことを考えましたね。

ーファイナンシャルプランナーなどお金のプロには相談しましたか?

ご主人 いえ、しませんでした。娘が中古のテラスハウスを買ってリノベしていたので、その時の費用を参考にさせてもらって目標金額を決めました。娘から話を聞くまではリノベということばも知りませんでしたね。加えて、年金とは別に老後の資金がどれくらい必要かも計算しました。

「マンションには畑がない」

ーマンションか戸建か、エリア選びなど選択肢は無数にありますよね。

奥様 移住を考え始めた頃はマンションでもいいかなと思っていましたが、よくよく考えるとマンションって畑がないんですよね。

ご主人 これまでずっと畑のある暮らしだったのに、なくなったらどうするんだ?と(笑)。

奥様 ちょうど今年の3月に主人が定年を迎えたのですが、ずっと畑で働いてきて趣味もない人が、マンションに引っ越したらきっと家に閉じこもっちゃう!と思い、畑のある場所を探すことにしました。

ー今のお住まいは、まさに庭付きのテラスハウスですよね。

ご主人 でも、規模も育てているものも全然違いますね。農家をしていた頃は米、麦、大豆、ビートなどを育てていましたが、今はナス科やアブラナ科の野菜が中心。育てたことのない野菜ばかりだから全然わからなくて実は勘で育てています(笑)。それに、東京と北海道では気候もかなり違いますね。

奥様 東京はお天気の良い日が多くてびっくりしました。

ローン完済後、大きく貯金増

ーこのエリアで家探しを始めたきっかけは?

奥様 3年前、娘がこの町に引っ越した時です。孫が保育園を転園する合間の約10日間、私たちが東京に行って娘家族のサポートをしたのですが、もう一瞬にしてこの街に惹かれました。自然豊かで、駅から敷地まで遊歩道が続いていてお散歩も楽しくて、「私、ここなら住める!」と思いました。

ご主人 周りに公園もたくさんあって二人ともすぐに気に入りました。


▶︎娘さん家族が公園にピクニックに行く際に撮影したもの。公園に行く道のりも自然あふれる遊歩道です

 

奥様 移住先の希望が一気に明確になったことで、貯金も一層頑張れるようになりました。

ご主人 ちょうど北海道の自宅のローンを完済したタイミングでしたので、貯金に回せる金額を一気に大きくできました。

奥様 夫婦それぞれに給与をもらっていたので、主人のお給料で生活をして、私の分は手をつけずに貯金しました。夫婦2人ならそれほど出費も多くありませんから、トントン拍子に貯まっていきました。結果、蓋を開けてみると、あれほど心配していたのに、いつのまにか目標金額に到達していました。

物件はキャッシュで購入


▶︎浴室を2階に上げたことで生まれた広い玄関ホールには壁一面の大きな収納を設けました。靴やコート、工具類もまるごと収納

 


▶︎玄関ホールには洗面台を設置。DIYや農作業から帰ってきたときに手洗いがしやすいよう実験用シンクとレバーハンドルを選びました

 

奥様 それと、ここを買うのを決めた時、不動産仲介の担当者さんが金額交渉をしてくれたおかげで額面よりもかなり値下げしてもらえたんです。

totonoi ここは通常のマンションよりも住宅ローンが組みにくい物件でした。A様はキャッシュで購入されるご予定だったので、交渉ができました。A様はご存じでしたが、お仕事をリタイアされている方の場合は、やはり現役時代よりもローンが通りにくいです。リタイア後に住み替えを考えている方は、まとまった資金をご用意いただく必要があると思います。

ーなるほど。ローンを組めないのは、リタイア後に移住を考える際のハードルの一つですね。

奥様 そうですね。私たちの資金計画も「ローンを組めないからやっぱり貯めないとダメだ」というところからも始まりましたから。

まとめ

リタイアが近づくと、元の住まいのローンが完済していたり、子育ての費用が不要だったりと、現役世代とは家計の状況も大きく変化。資金計画も次のステージへ移行することがよくわかります。さて、次回は、テラスハウスのリノベについてお届けします。

>>これからの暮らし方 移住編
#03 コンパクトで 生活しやすい家に」