不動産の相続が発生したらどうなるの?

totonoi世代で考えられる不動産相続のタイミングは、親御さんが亡くなった時が殆どではないでしょうか。まず、相続の大まかな流れをご説明すると、

1)どんな財産があり誰が相続人なのかを確定する
2)相続をするために必要な書類を揃える
3)相続不動産がある場合は登記変更を行う
4)最後に(課税対象の方は)相続税の申告と納付を行う

という流れになります。上記を、相続開始(被相続人が亡くなった日)を知った日の翌日から10ヶ月以内に終える必要があります。

不動産相続で必要になる書類

不動産を相続することになった場合は、どのような書類が必要になるのでしょう。不動産の相続には不動産登記が必要になり、相続不動産の所在地を管轄する法務局で手続きを行うことになります。

以下は、「遺言状がなく、法定相続人(※)が相続する場合」に必要な主な書類は下記の通りです。
<不動産相続手続きに必要な主な書類>
・被相続人の戸籍(除籍)謄本
・被相続人の住民票の除票(本籍記載)
・(被相続人死亡日以降の)相続人全員の戸籍謄本
・法定相続人の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・不動産を相続する相続人の住民票
・不動産の登記事項証明書
・不動産の課税明細書又は固定資産評価証明書
・登記申請書
・収入印紙(登録免許税の金額分)

これらの書類すべてを揃えるのは大変な作業ですが、揃え終わればあとは不動産登記申請を行うだけですので、大きな山は越えたと言えます。

相続税が発生するのはどんな場合?

相続税は、課税対象となる相続財産(相続人が所有していた不動産や預金など)の合計額が、基礎控除額を上回ったときに発生します。その際の不動産の評価額は、相続が発生した時点の時価(実税価格)の7〜8割程度を目安に定められます。相続税における不動産評価の計算方法は複雑なので、この辺りは税理士や司法書士などのプロに相談するのがおすすめですが、ひとまずの目安として、に。基礎控除額は以下の計算式で算出します。

基礎控除額の計算式:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば法定相続人が1人であれば、基礎控除額は3,600万円です。したがって、相続財産の評価額の合計が3,600万円以下であれば、相続税が課税されないことになります。
※ 法定相続人:民法で決められた相続人のことで、被相続人の配偶者と子が第一順位の相続人

不動産相続にかかる費用は?

相続税以外にも、不動産を相続する場合にはさまざまな手続きに費用がかかります。主な費用としては、登録免許税(おおよそいくら?)、登記簿謄本等の取得費用や郵送費用(数千円)、一連の手続きを司法書士に依頼した場合の司法書士報酬(おおよそ5万円程度)です。登録免許税は、相続税評価額によって変動しますが数十万円の中で収まることが殆どです。

相続をしたくない場合。相続を放棄するという選択

これまで、相続を承認する前提でお話ししてきましたが、マイナス資産が多くて相続をしたくない場合、相続放棄や、相続不動産を物納するという選択肢もあります。とはいえ、相続放棄の場合は現金などのプラス財産も含めて放棄することになりますし、物納は相続税に充当できる資産が相続人にほとんどないという場合で、さらに認められるための条件も厳しく、全国で年間数十件程度しかありません。

まずは売却や賃貸、あるいは自治体の空き家バンク制度の利用を検討し、相続人として財産の処分や管理を正しく行いたいところです。相続を承認するか否かは、相続を知った時から3ヶ月以内に決める必要があるため、所有財産を調査し、明確にするにはスピード感ある対応が求められます。

不動産を相続する前にしておきたいこと

「相続人は自分と兄弟姉妹だけだから簡単」と思っていても案外手間と時間がかかったり、場合によっては揉めてしまうこともあります。特に、不動産を相続する場合は注意が必要です。不動産は現金のように分けることができません。そのため、誰が相続するのかの話し合いが必要になったり、売却して現金化するにも相続人間での合意が必要になります。

ですが、不動産の売却には時間がかかるもの。相続税の申告・納税の期限内に売れない可能性もあるので、相続が発生したら不動産をどうするのか、あらかじめ相続人・被相続人間で話し合っておくことが望ましいでしょう。売却する場合の準備をしておいたり、相続発生前に売却手放しておくのもひとつの手です。

物件を売却して現金化できた場合は、相続税の支払いに充当できます。あるいは第三の手段として、所有し続けながらセカンドハウスやアトリエとして活用する方もいらっしゃいます。不動産がある場所や広さなどの様々な条件によって、より良い選択肢が変わってきますので、自分たちだけで解決することにこだわらず、プロの力を借りるのも良いでしょう。

相続への備えは「見える化」から

実際にあったケースをご紹介します。ご相談にこられたAさんのお父様(被相続人)が亡くなり、不動産を相続することになりました。相続手続きのために登記簿謄本を取り寄せたところ、登記名義人がAさんのお祖父さんのままになっていました。実態としては、被相続人が単独で使用している状態で、相続をしていたものと思っていたAさん。お祖父さんは既に亡くなっているため、相続人はお父様のご兄弟になり、そのうちの何人かが亡くなっているため、さらにその子どもたち(Aさんの従兄弟)、とかなりの数に膨れ上がりました。相続人全員の承認がなければ、相続の手続きが進められないので、弁護士に介入してもらい、ようやく相続の手続きを進められた。という事がありました。

こういった蓋を開けてみるとびっくり、という事も他人ごとではありません。

残された相続人が手間取ることがないようにするには、被相続人が、生前にしっかりと自分の財産管理をしていることに尽きます。財産の内容を見える化しておくだけで、相続財産の調査は比較的容易になります。

親御さんの財産管理状況に不安があったり、把握ができておらず不安という場合には、親御さんに「相続のことで兄弟姉妹で険悪になりたくないから、事前にみんなで話したい」と持ちかけてみてはいかがでしょうか。その際は、親御さんへの気遣いとして、「親が死ぬから」ということを主題にするのではなく、「僕たち(子ども)が困るから」「親が残してくれるものを大切にしたい」といったことを主題にして話すことがポイントです。被相続人である親御さんが元気な間に、相続財産の見える化を一緒にししてみてはいかがでしょうか。

ご自身で行うこともできなくはないですが、決して容易ではありません。totonoiから税金や法務のプロである弁護士、司法書士、税理士をご紹介できますので、お困りごとがあった時は、お問い合わせください。


参考サイト:財務省「相続税のあらまし」