親子二世帯の暮らしに選んだのは「長く住める家」

3つのお部屋を2世帯で使うという面白い住まい方をしているA様(親世帯)&B様(娘世帯)ファミリー。娘のB様は結婚後、自身が育った場所であり、親のA様がその後も暮らすこの団地に戻り、親子2世帯で近居する暮らしを選びました。

「私たち夫婦は共働きで、両親に娘の面倒を見てもらえる環境を望んでいました。もちろんそれだけではなく、これから子育てをしていく上で大切な、学校が近くにあることやスーパーマーケットが近いこと、豊かな敷地でのびのびと暮らせること、そして、“これからも長く住める住宅である”ことでした」(B様)

▶︎1階の壁のない部分(ピロティ)三角形の筋交いが入っていました

A様とB様親子が二世帯ライフの場所にこの団地を選んだのは、この団地が「100年持たせる」という意識をもって、しっかりと管理されてきたことも理由でした。その一つが耐震補強。自転車置き場になっているピロティに、筋交いが入れられていました。

もう一つが設備配管の取り替えが行われていたことです。正しくメンテナンスをしていればコンクリートは100年持つと言われていますが、給排水管などの設備関係の耐久年数は30〜35年と言われています。35年経つと管の内部は多少の差はあれ劣化してしまうので、管自体の交換は必須です。今回のリノベーションは、設備配管を全面更新する大規模修繕が終了した後に行いました。

この暮らし方になったワケ

親世帯のA様も団地内で二世帯近居を送ってきたそうで、同じ棟の真上と真下の住戸2戸を使って、A様世帯と亡くなったお母様(B様にとってお祖母様)とで暮らしていました。そこへ、娘のB様世帯がジョイン。娘のB様世帯は当初、別の棟の住戸を購入し、近居生活を送っていました。郊外型の団地は価格が手頃で、1戸が50㎡程度なので、このように複数戸を使う暮らし方をするご家族がちらほらいるそうです。

「大規模修繕が終わったら私たちの住戸をリノベーションしようと待っていたところ、今、親世帯が寝る家にしている住戸の隣の住戸がタイミングよく売りに出たんです。そこで、急遽作戦を変更。それまで住んでいた別棟の住戸から隣の部屋に住み替えて、リノベーションをすることにしました」(B様)

▶︎棟がゆったり配置された昔ながらの郊外型団地

こうして、同じ団地の棟の上下と隣の3戸を、「親世帯が寝る家」「子世帯が寝る家」「家族が集まる家」として暮らす計画がスタート。リノベーションプロジェクトは、娘のB様主導で計画が進められました。住宅雑誌やWebを見て設計依頼先を探し、totonoiのグループ事業であるEcoDecoを見つけたと言います。totonoiが行っているリノベーションサービス『大人のリノベ』は当時、EcoDecoで展開していたサービスでした。

「色々な雑誌やWebを見ていて「これは好きだな」思う事例は、決まってEcoDecoだったんです」(B様)

そうして、「家族が集まる家」はキッチンとフローリングの変更という部分リノベーションを行い、娘のB様たち「子世帯が寝る家」は、フルリノベーションを行うことになりました。

「家族が集まる家」が団らんの中心

▶︎複数人が入ってもぶつからないサイズのキッチン。親子三世代でくつろぐ場所

「家族が集まる家」は、家全体をLDKのように使っています。A様ご夫妻は日中のほとんどを「家族が集まる家」で過ごし、平日の夕方以降や週末はB様ご家族も集まって賑やかに過ごしています。夫婦共働きのB様ご夫妻に代わり、学校帰りのお孫さんの帰りを待っているのはA様ご夫妻。「家族が集まる家」は、みんなが集まり会話を楽しむ場所なので、特にダイニングキッチンで過ごす時間が多くなります。リノベーションで広めのカウンターキッチンにしたことで、母娘並んでの作業も快適です。

A様ご夫婦が使う「親世帯が寝る家」は、就寝以外に多目的に使っています。LDKの機能は「家族が集まる家」にあるので、空いたスペースにエアロバイクを置いたり、DIYの作業スペースとしているのだそう。

娘世帯の「子世帯が寝る家」はフルリノベーション

▶︎工事真っ最中の「子世帯が寝る家」。リビング兼キッズスペース

娘のB様世帯が使う「子世帯が寝る家」は、購入のタイミングでフルリノベーションをしました。この家のリノベーションは、プロの手+DIYでできています。DIYで施工したのは壁面の塗装。A様のご主人もB様のご主人もDIYは未経験でしたが、今では工具を使いこなし、すっかりDIYerなのだそう。

▶︎カラーワークスのサンプル。1488色の中から選んでいく作業は、悩ましくも楽しい時間

私たちが日頃、リノベーションで使用する塗料は通称「日塗工(にっとうこう)」と呼ばれている「日本塗料工業会」が出している色見本から色を選ぶことが多いのですが、今回の塗料はB様ご夫妻のこだわりもあり、「カラーワークス」の「Hip」という塗料を使用しました。

▶︎トイレは鮮やかなブルーをセレクト。「8034M/Pacific Ocean」という名前のカラーです

「日塗工」の塗料よりも少し価格が高いのですが、抗菌加工といった機能性もあり、そして微妙な色のニュアンスが選べるので、色にこだわりたい方にオススメの塗料です。

▶︎フローリングはアンティーク風に仕上げたオーク材。素足でその良さを体感して決めた

「子世帯が寝る家」は、毎日寝ることと朝食を摂ること、そしてB様ご家族が3人で休日を過ごすための家です。「家族が集まる家」のキッチンを一新したこともあり、B様世帯が使うこの家のキッチン設備は最低限の機能に抑え、使い勝手や素材にこだわることができました。

▶︎ダイニングテーブルの横にある黒い壁は鉄板。マグネットで学校からのお知らせなどを貼っている

キッチンの面材には、B様がもともとお持ちだったダイニングテーブルに合わせて、アメリカンチェリー材を採用しています。

▶︎リビングスペースはキッズスペースも兼ねていて、真ん中にロープが吊り下げられていました。

「50㎡ちょっとのスペースなので、あまり細かく仕切らずに子供部屋はリビングの一部につくりました。ハンモック用のフックに取り付けたのは、ロープで、娘が登り降りして遊んでいます。将来的に個室が欲しいと言われた時には、壁を作ってもいいし、『家族が集まる家』か『親世帯が寝る家』に個室を設けてもいいかなと思っています」(B様)

▶︎寝室にはシングルベッドとダブルベッドを並べて置き、親子3人が寝ているそう

新しい3戸横断スタイルの暮らし

共働き世帯が増え、長寿化も進む昨今、親世帯と子世帯が同じマンションや団地内で近居するスタイルは増えているそうです。そうした中でも、A様&B様ファミリーの3つの住戸をそれぞれ居室感覚で使う暮らし方はユニーク。3つ合わせると約150㎡の面積になるので、2世帯ライフもゆったりした暮らしができそうですが、各お部屋を用途に応じてリノベーションすることで更に今の家族の暮らしに合った家として機能させることが叶いました。

二世帯住宅でもなく、完全同居でもない、新しい親世帯と子世帯の暮らし方として注目されていきそうです。