暮らしも働くもオーダーメイドで組み立てる

私が二十代前半で「起業」を決意したのは、「場所や時間にしばられることなく自由でありたい」というのが一番の理由でした。子育てをしながらでも自分らしく生きるために、働き方をオーダーメイドで組み立てるには「起業」という生き方が一番の近道のように当時は思えたのです。

事業内容を決めたときも、「暮らし」に自由を求めていました。既成の間取りを自分に当てはめるのではなく、自分の好きなように暮らしをデザインできないものだろうかと。「20代の私でも手が届く価格帯で、自分にぴったりの心地よい住まいが欲しい」という思いを実現するため、「中古を買って、リノベーション」のサービスをスタートさせました。私にとって、「中古を買って、リノベーション」は自由への近道であり、暮らしの心地よさへのこだわりでした。

そして、創業から十年以上が経過した2016年、「暮らし」だけではなく、今度は「働き方」にも自由な選択肢を求めて、コロナ前からリモートワークを実施するなど社内の改革に踏み切りました。プライベートを犠牲にして働いて、家族や親や友人に「時間が取れなくて申し訳ない」と罪悪感をもち、「自分のやりたいことができない」と不満を抱え続ける人生よりも、「働き方」を変えると宣言し、時代にあわせてこれまでの働き方の価値観や考え方をシフトできれば、人生を変えることもできると思ったからです。

2016年にスタートさせた試行錯誤のチャレンジを振り返りながら、これからの時代の「暮らし方」「働き方」を考えたいと思います。

 

「わがまま」から「われのまま」へ

理想の「働き方」を探す時に、まずは理想を可視化することからはじめました。私たちが提供しているリノベーションサービスも理想の暮らしの可視化からはじめています。お客様と理想の「暮らし」を実現するためには、目指すゴールのイメージを共有することがとても大切だと考えるからです。

お客様とは、ヒヤリングシートや写真を見ながらイメージを共有しています。以前は、雑誌の切り抜きなどで共有することが多かったのですが、近年はpinterestなどの写真や動画のイメージ検索サイトを利用することも多くなりました。自分らしい「働き方」を見つける時も、リノベーションと同様に理想を可視化することからスタートです。

・自分を活かすための環境はどんな環境なのか。
・どのような人間関係を構築したいのか。

この2つの軸を中心に考えるとイメージしやすいと思います。今までは、自己中心的で「わがまま」と思われていたようなことでも、自分自身がありのまま「わがまま=われのまま」の状態で活躍できる環境を整備することをイメージします。

私自身は、ワクワクする面白い仕事であること。プライベートも仕事も一貫して変わらずに居れること。そして、ひとりではなく志を共にする仲間と一緒に働きたい。ということの優先順位が高いことに気づきました。

リモートワークも、コロナ前にこの働き方を希望するなら「わがまま」と捉えられる節がありましたよね。しかし、時代が大きく動いている今こそ変化をするチャンスです。

自己中心的な「わがまま」と、自分本来の姿を成長させていくための「わがまま=われのまま」は似ているようで違います。自分を活かしやすい環境を選び、人間関係を構築する。そして育むこと。理想の働き方への近道です。

 

共に働く皆の「わがまま=われのまま」を最適化する

totonoiの読者の方は、世代的に組織やチームのリーダーを任されている方も多いのではないでしょうか。個人の理想とする「働き方」が見えてきたら、会社やチームのメンバーの「わがまま=われのまま」を最適化することが次のステップです。

皆が想いを口に出すことから始め、ディスカッションしながら共有し、共通した思いを抽出していきます。既に一緒に働いているメンバーだからこそ、共通する想いがあるはずです。

これまでは、オフィスに出社することで、言葉にしなくても場所に集うことで感じていた「空気感」や「価値観」を言語化し、可視化していきました。

チームで想いを可視化するためには、具体的に、お客様、社外のパートナー、社内に対してこれを実現できてないと感じること・場面などの日常をイメージしながら、自分たちの想いを浸透させるためには日常の中でどう取り組むといいのかをディスカッションすることが効果的でした。

私たちが取り組みを始めたのは、コロナ禍前だったため対面で時間を重ねましたが、「オフィスに出社しない」という環境下でも、テーマを決めて時間を確保し、全員がしっかり発言できる環境を整えることで同様の効果が見込めると思います。

可視化ができたことで、同じ場所に集う機会が少なくなったとしても、リモートワークで離れた場所にいても、同じ空気感を纏い、共通する価値観を持ちながら、安心して仕事に取り組める環境を整えることができました。

そして、自分たちの理想と現実の差を埋める作業の積み重ねこそが、チームの強化、強いては自分が働きやすい環境を整えることに繋がります。メンバーの誰もが無理をせず、それぞれの長所を伸ばす事ができる環境を整える。これからの時代の組織づくりの鍵となります。

 

6年後の私たち

そこから6年という年月を費やし、自分たちを活かしやすい環境を選び、人間関係を構築していった私たち。育むことを続けていると、私自身、働く事、生きる事がとても楽になりました。

働きやすい環境が出来たことで、スタッフの定着率も上がりました。業務に真摯に向き合える環境が整ってきたことで、一人ひとりの業務の範囲も増え、お互いにカバーし合える範囲も格段に広がりました。お客様からのお叱りをいただく事も減りました。いいことしかありません。

第2回ではでは、私たちが働き方改革に取り組んだ6年間を振り返った時に、難しかったこと、努力して変えたことについて振り返りたいと思います。自分が望んで理想の働き方を実現しようとしているのに、自らの足を引っ張る考え方や価値観があったことについて、綴りたいと思います。

つづきはこちら
自らの足を引っ張る考え方、価値観