大人世代の住み替えは新築を選ぶ方が多い

大人世代(50代以上)になり、これから先の人生をより充実させ、自分にとって理想のライフスタイルを実現させるためにお金と時間を使うための選択として住み替えを選ぶアクティブ思考な方が増えています。その中でも、終の住処と思って購入した広い家を売却して、駅近のタワーマンションやコンパクトな戸建に住み替える方が増えています。

こうした方の中では「新築」志向の方が多く、中古を選択する方は少数派です。なぜ新築なのでしょうか。その背景には、「今まで住んでいた家が古くなったから新しい家がいい」「なんとなく新築のほうが安心」という新築信仰と、わかりやすい資産性が挙げられると思います。この傾向は、30〜40代の若年世代と比較しても、大人世代の方がより強く表れています。

しかしながら、住宅の供給過多と少子高齢化が進む今、これから新築マンションの供給量は減少することが予想され、高額化していくことが予想されます。2020年のコロナ禍以降、分譲住宅への需要は増し、値下がりする気配はありません。一方、中古マンションは若年世代の需要が高まり、売却から成約までの期間は短くなりつつあるものの、新築と比較すると選択肢は多いのが現状です。

せっかく理想のライフスタイルを実現しようと動いても、「新築」だけに縛られてしまっては、理想に近づけないかもしれません。中古マンションを含めて考えた場合、どのような選択肢が生まれるのでしょうか。中古物件の見極め方と合わせてガイドしたいと思います。

 

新築マンションと中古マンションの動向を比較

ではここで、新築マンションと中古マンションのここ1,2年の動向を比較してみましょう。

まずは新築マンションの動向について。不動産経済研究所の調べによると、2020年の首都圏における新築マンションの供給戸数は12.8%減の2万7228戸で、平均価格は前年より1.7%上昇の6,083万円と、バブル真っ只中の1990年以来の6000万円台に上昇しました。供給量はコロナの影響からか、郊外エリアに伸びがあり、東京都区部と神奈川県、埼玉県で20%超の落ち込み、対して東京都市部と千葉県ではそれぞれ30%近い上昇となりました。(*1)

次に、中古マンションの動向はどうでしょうか。レインズを運営する東日本不動産流通機構によると、成約価格自体はやや上昇(都心部は10%程度上昇)しています。流通している物件の在庫数を見ると、人の動きがストップしていた2020年4月から6月の緊急事態宣言時やや増えましたが、宣言明け以降急激に減少し、前年度と比較して結果的にー25%程度となっています。「成約価格が上昇」し「中古物件の流通数が減っている」という状況は、購入ニーズに対して販売物件が少なくなっており、需要と供給のバランスが崩れたために価格が上昇していることが推測できます。(*2)

高くなっているのであれば、価格が下がるまで待ちたいという気持ちもありますが、不動産の購入は実用的なもの。いつまで待てばいいのかわからない状態で待ち続けられる方はそう多くありません。今のところ価格が下がる要因が見当たらないところから、この状況は引き続き変わらないといえます。中古物件も高くなっているとは言え、下記の比較を見ると、新築マンションと比較すると価格や平米単価に大きな開きがあることがわかります

【首都圏における2021年3月の不動産流通価格の平均】
<新築マンション>(*3)
平米単価 93.5万円/㎡  平均価格 6,330万円

<中古マンション>(*2)
平米単価 59.02万円/㎡  平均価格 3,837万円 

(*1)不動産経済研究所 首都圏マンション市場動向2020年(年間のまとめ)
(*2)東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watchサマリーレポート 2021 年 3 月度
(*3)不動産経済研究所 首都圏マンション市場動向2021年3月

新築マンションと中古マンションのそれぞれのメリットは

新築物件も中古物件も、価格は上昇傾向にあることがわかりましたが、それぞれのメリットは何なのでしょうか。

新築マンションは、何といっても建物も設備も新しく、まっさらな状態で入居ができる、という点が一番大きいのではないでしょうか。それに加え、震災の度に更新される耐震基準をクリアして建てられているので、耐震性に優れている点が挙げられます。また、断熱性や静音性も高くなっており、終の住処として、これからの人生を送るには安心感があります。

対して中古マンションは、「さまざまな選択肢がある」という点が大きなメリットとして挙げられます。価格、立地、築年数、広さ…多くの物件の中から選択することができ、さらにリノベーション(リフォーム)をすることで、設備機器を更新することもできます。何より、自分のライフスタイルに合わせた間取りや内装にできる良さがあります。新築との価格差をリノベーションに費やすことで、より「自分らしい暮らし」を叶えられる、というメリットがあります。

 

中古マンションを選ぶ際に気をつけるべきことは?

では、中古マンションを選ぶ際に気をつけたいことはなんでしょう。特に気をつけるべき4つのポイントを挙げました。

1)耐震性

日本の耐震基準は大規模な地震が起きる度に改正されています。特に大きな基準点としては、1981年の建築基準法改正以降に確認申請を受けたのか否かによって、判断をすることが多いです。簡単に違いをご説明すると、

旧耐震:中規模地震の際に揺れるけど、元の状態に戻る耐力がある。
新耐震:中規模地震の際には揺れるけど元の状態に戻り、大規模地震の際には倒壊や崩壊しない耐力がある。

という違いです。少し言い換えると、旧耐震の場合は「大規模地震」を想定しておらず、新耐震の場合は「大規模地震」が起きた場合に倒壊せず避難できるけれども、建物にダメージは受ける。というように設計されています。耐震性に関する解説は、totonoiの姉妹サイト「EcoDeco Staff blog」で記事(*4)にしていますので、ぜひご覧ください。

これは大きな違いですので、新耐震基準のマンションをお選びいただくと安心できるかと思います。ただ、旧耐震の中でも耐震検査により新耐震並みの堅牢さがあると判断された場合や、耐震工事を施したマンションもありますので、一概に築年数にこだわらずに物件の情報をよく調べてくれる不動産仲介会社と出会うことも重要です。

(*4)物件を読むコツ教えます-vol.14:番外編(耐震のコト2)

2)バリアフリー化

新築や築浅のマンションでは、共用部も含めてバリアフリー化されていることが珍しくありません。高齢になった際の歩行や車椅子利用を考えると、気にしたいポイントですよね。築20年を超えるマンションの住戸は、水回りの配管の問題で室内に段差があったり、車イスが通れる廊下幅が取れていないケースが多いため、リノベーションする際はバリアフリー化も配慮しましょう。。もう一つ気をつけたいのは共用部の段差問題です。室内と違い、共用部は個人の力ではどうすることもできない部分なので、内見の際には段差の有無、廊下幅、エレベーターのサイズなども確認するといいでしょう。

3)維持管理費

マンションでは、戸建と違って外観や配管、日々の維持管理を「修繕積立金」や「管理費」という名目でマンション全体で集めて適切に保ちながら運営しています。多くの場合、持分の割合で支払額が決まります。そのため、戸数が多いほど費用負担は軽くなり、少ないほど重くなります。この戸数の多寡による影響は、多くのマンションで行われる十数年に一度の「修繕積立金の値上げ」の際にも大きく反映されますの。働いている間はあまり気にならなくとも、年金生活になった際にこの負担額が大きく感じることが予想されますので、物件価格だけではなく、維持管理費の負担額にも気をつけましょう。新築分譲時は、購入を促すために修繕積立金がかなり抑えられて販売されます。数年から十数年後には数倍〜10倍程度に値上がりするように計画されているものですので、新築マンションと中古マンションを比較する際は、値上がり後の費用負担も見据えて比較するようにしましょう。

4)資産価値

長期的にマンションを所有する場合、将来の資産価値がどうなるのか気になるところです。マンションの場合、資産価値としては一般的には新築分譲時が最も高く、居住した瞬間に80%になり、築25年程度までに半分程度の価値になると言われています。この考えはあくまで建物に対するものであり、土地の価値=立地の魅力は建物が古くなったからといって変わるものではありません。立地条件がいい物件を選んでおくと、将来自分が住まなくなった場合の売却や賃貸活用がしやすくなったり、相続人が自己利用しやすくなったりと、活用しやすいでしょう。

 

「新築物件を自分らしくリノベする」という方法

ここまでお話してきて、「新築で、自分らしく暮らしたい」という欲張りとも言える思いが出てきた方もいらっしゃると思います。

新築物件は、住宅性能や設備機器が最新で充実していますが、「自分らしく暮らす」というより「間取りに合わせた暮らし」になることがネックになることが多いですよね。そうであれば、「リビング横の和室をなくして広いリビングにしたい」とか「気に入った内装の仕上げに変えたい」というプチリノベーションで希望が叶う場合もあると思います。実際に、弊社にも「希望の物件が見つかったけれど、間取りだけがネックで決めかねている」というご相談が寄せられることもあります。新築マンションをリノベーションするのはもったいない気もしますが、長い間「自分らしく暮らす」ことを優先して、部分的にリノベーションをするという方法もありますよ。

 

まとめ

これまで、「新築の方が高い」という前提でお話しましたが、エリアによっては中古マンションよりも新築マンションの方が安い場合があります。他にも、「利便性が高い駅の駅近がいい」という方は、駅前が再開発されているような郊外の駅前を視野に入れてみてはいかがでしょう。例えば、元々大きな駅だった立川駅は再開発され、世代を問わず楽しめる街へ進化していますし、アーバンパークラインの流山おおたかの森駅や、千代田線直通運転が始まった北綾瀬駅あたりは近年で開発が進み、変化の途中ですので、まだ手頃感があります。物件の新しさも、住む街もイメージや固定概念にとらわれず、柔軟に検討してみてはいかがでしょうか。