住まいの性能を上げる設備をどう考えますか?

これから3回に渡って、リノベーションで住まいの性能を上げることについてお伝えしてきます。今回は、「冷暖房」についてお話します。

▶︎中央にあるエアコン。冷暖房を上手に使うには…?

『大人のリノベ』は、常々「心地よい暮らし」をつくることを大切に考えています。現在の住まいで感じているストレスで、身体にダイレクトに感じるものを解消できたらどうでしょうか。現在の住まいを購入した頃に、近年の夏の暑さを想像したでしょうか? 冬の寒さは年を重ねる事に厳しく感じるようになっていませんか? 気候も変化していますし、設備の性能は年々向上しています。そして何よりご自身が感じる感覚も変わってきているのではないでしょうか。

日本は四季がはっきりしていて、夏暑く、冬寒いということがわかっているのに、世界基準で見ると断熱後進国です。徐々に新築の基準を整えている…というレベルなんですよね。今回のコラムでは、今ある家で(しかもマンションでもできること)に焦点を絞って「快適に暮らせる方法」をご紹介していきます。

冷暖房といえば、まずはエアコン

冷暖房機器として、まず思い浮かぶのは「エアコン」ですよね。リビングに1台、各個室に1台ずつ設置されていることが多いと思います。

でも、みなさんに話を伺うと、実はエアコンは好きではないという方も多いんです。寒すぎたり乾燥したり、風に不快感を感じたり、「ちょうど良い状態」にするのが難しいと仰るのです。寝室に設置したくないという方もいらっしゃいますが、夏の熱中症対策の意味で、エアコンを無しにすることはおすすめしません。今設置されているエアコンは何年製ですか?ちょっとご覧になってみてください。エアコンの性能も随分向上しており、不快状態を回避し、「暑く感じない」「寒く感じない」という方向性になってきています。

空調の考え方の変化

▷マルチカセット式のエアコン。totonoiのcase studyにも登場している杉並区のH様邸で採用された方式です

また、エアコンをこまめにON/OFFするのではく、つけたまま一定温度を保つという使い方の方がさまざまなメリットがあるという考え方に変わっています。これは、温度を上げ下げするときの電力消費が大きいためです。電力消費量の少なさでどちらに軍配が上がるか、建物や状況等によって変わってきますが、使うときだけエアコンをつけて温度を変えるより、一定温度が保たれている方が快適でもありますよね。一例として、エアコンメーカーのダイキンが面白い検証実験をしていました。図解もされていてとてもわかりやすいです。

>ダイキン 空気のお悩み調査隊 エアコン暖房を「つけっぱなし」にするのと「こまめに入り切り」するのでは、どちらの電気代が安くなるの?

「一定温度に保つ快適さ」というキーワードは、家全体の室温を一定に保つということにも通じます。空調が効いているのは、リビングや今いる個室のみ。それ以外のトイレや洗面、個室になったキッチンは夏暑く、冬は寒い…といった状況になっていませんか? 家の中での熱中症やヒートショックは防ぎたいですよね。では、これをどうすればいいのでしょうか。


A.間取りで解決

50〜60㎡の広さだと、実はエアコン1台でも大丈夫なのです。例えば廊下をつくらない間取りとしたり、洗面やクローゼットなども必要なときだけ閉じるようなオープンな形式とすることで、リビングと連続した空調環境をつくることができます。


B.エアコンを分散 

住まいの小さなスペースにも空調を配置してどこでも快適にするための手法です。

■小型エアコンを設置
3帖程度を想定したコンパクトなエアコンです。通常の壁掛けタイプは大きすぎる場合に向いています。6帖程度の部屋に設置して使っている方もいます。

■マルチカセット式エアコンを設置
1台の室外機に複数台のエアコンを設置する方式で、これまでエアコンが設置できなかったキッチンや洗面所などにも設置できるものです。天井埋め込みビルトインタイプの場合は見た目もすっきりしています。ただし、イニシャルコストはやや高めかもしれません。


このように、ひと口でエアコンを設置すると言っても、さまざまな方法があることがわかります。エアコンを新しいものにするということだけではなく、使い方も含めて考えていきたいですね。

床暖房の導入を考える

暖房器具として、エアコンの次に思い浮かぶのが床暖房。リノベーションを機に導入したいという方が一定数いらっしゃいます。

▷床暖房のマットが敷かれた状態。この上にフローリングを施工していきます

床暖房はどうやって温めるのかというと、床下に設置されたマットが暖められて床を暖め、そして空気を暖めるという形式で、これを輻射熱といいます。床に触れた時の直接的な暖かさ、そして床付近の空気は暖められ、暖気は上昇していきます。どちらかと言うと「寒くない」ことを実感するかもしれません。

>ダイキン 床暖房の基礎知識 床暖房のしくみ「どうやって暖めているの?」

どんな人に向いている?


・温風が好きではない方
・部屋が広い(容積が大きい)方
・長時間在宅される方

暖かさを感じるまでに少し時間がかり、エアコンに比べて速効性はありません。しかし、じんわりと全体を穏やかに暖めるので、一度温まると心地よい室温が保たれますので、在宅時間が長い方に向いています。


この床暖房、実際のところ希望される方は多いのですが、設置費用が理由で断念されてしまう方も多いのです。逆に、「費用をかけても導入を」と考えるのは、床暖房の快適さを知っている方。これまで床暖のある生活を送ってきた方はその快適さを知っているので、必須と考えます。

床暖房は、床の仕上げの下に設置するので、あとから工事をするのは大変です。リノベーションで床を仕上げるタイミングで導入するのがスムーズです。そう考えると、私たちはもう少し、床暖房の良さや必要性を伝えるべきなのではと考えています。

床暖房には大きく分けて3つの方法があり、それぞれ特徴があります。表にまとめましたので、比較してみましょう。

それぞれ一長一短があり、さらにご自宅の状況で設置ができる設備も変わってきますので、一緒に解決していきましょう。

まとめ

冷暖房機器は快適さをダイレクトに感じることができるもの。心地よい生活を設備機器の面からも見直してみませんか? 次回は、窓の断熱についてお伝えします。